トリック

「トリック」という言葉は、「いたずら」や「ずる」「手品」などの意味を持つ言葉ですが、推理小説などで「人を欺くための計略」という意味の専門用語として用いられます。推理小説では、名探偵が犯人の仕掛けた死角を突いた、はたまた奇想天外なトリックを見破り追い詰めることがその醍醐味なのです。

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トリックの種類

作家・江戸川乱歩は「類別トリック集成」という作品で古今東西の推理小説で用いられたトリックを分類化しています。推理小説の犯人トリックを用いる理由は、「犯人が自分に疑いを掛けられないため」であり、「犯人から探偵への挑戦状」でもあるのです。

物理トリック

消滅する凶器や、自動的に出来上がる密室といった機械や物質の特性を利用したトリックのことです。また、物理トリックには後述するアリバイトリックのために使われる犯行時間錯誤をねらったものもあり、大掛かりなものから単純なものまで千差万別の多様性が特徴であるといえます。代表的な物理トリックは金田一耕助のデビュー作である横溝正史のにおける、現場の密室化と同時に凶器の日本刀の転移を行うトリックでしょう。

心理トリック

探偵などの事件の捜査側の心理の盲点を突くことで疑いから逃れるというトリックです。世界最初の推理小説といわれるエドガー・アラン・ポーの「モルグ街の殺人」は、「葉人人は人間である」という思い込みを逆手にとって捜査側の心理の盲点を突き、読者をも騙した心理トリックの原点であるといえます。

叙述トリック

心理トリックの類型で、小説という形式そのものを利用して読者を騙すトリックです。「物語の語り部が探偵であると同時に犯人」であったり、「登場人物を誤認」させたりなどの作者側の演出によるものが代表的な叙述トリックです。「新本格ミステリー」と呼ばれるジャンルでは良く用いられるトリックです。ただし、推理小説の黄金則といわれる「ノックスの十戒」や「ヴァン・ダインの二十則」に反すると考える推理小説ファンも多く、賛否両論のトリックといえるでしょう。

密室トリック

推理小説の代名詞ともいえる代表的なトリックです。「鍵の掛けられた、誰も出入りすることのできない現場で発生した事件」と共に用いられるトリックで、探偵は密室を作ったトリックと、トリックの実行が可能だった犯人の二つの謎を解き明かすという王道的な作風を演出することができます。しかし、推理小説のトリックとしてはあまりに重用されすぎたためか、ジャンルとしては衰退の一途をたどり、新本格ミステリーの誕生まで不遇の時代を迎えたトリックであるといえます。また、舞城王太郎の「世界は密室でできている。」は登場する全ての関連のない事件が密室であるという異色作になっています。

アリバイトリック

「アリバイ」は「現場不在証明」、つまり「犯行が行われた時間に現場に居なかったことの証明」で犯人であるか否かを決める重要な証拠として扱われます。推理小説ではアリバイをトリックで偽装し、容疑から逃れようとする犯人を探偵が追い詰めていくといった筋書きで用いられています。西村京太郎ミステリーの時刻表トリックなどは、これの代表例といえます。

三次元の騙し絵・トリックアート

トリックアートとは、人間の目の錯覚を利用した新しい表現方法に基づくアート作品で、その起源はオランダのマウリッツ・エッシャーの騙し絵に見ることができます。光源を計算した陰影で絵を浮かび上がらせて見せることや、立体的な奥行きを強調して別の場所に居るかのような錯覚を感じさせるなどの、遊び心に溢れたものが多く知られています。日本各地には、トリックアート専門の美術館が点在し訪れる観客を驚かせる工夫の数々を楽しむことが出来ます。

「全部、まるっとスリっとゴリっとエブリシングお見通しだ!」〜ドラマ『トリック』

『トリック』はテレビ朝日系列で放映された堤幸彦監督による連続テレビドラマシリーズです、仲間由紀恵演じる売れないマジシャン・山田奈緒子と阿部寛演じる大学教授・上田次郎のコンビが超常現象を標榜するトリックを見破っていくというミステリードラマです。堤監督お得意のコメディ色の強いミステリードラマとして人気を博し、三回にわたって(2000年7月〜9月、2002年2月〜3月、2003年10月〜12月)放映され、劇場用映画・テレビスペシャルも製作されるなど、未だ根強い人気を誇る作品となっています。

登場人物

山田奈緒子(演:仲間由紀恵)

本編の主人公の一人です。父に天才マジシャン・山田剛三(演:岡田真澄)、母に書道家の里見(演:野際陽子)を持つ自称「売れっ子魔術師」。貧乳。生活に困窮していた所、上田が行っていた研究のための超能力者募集に志願し、超能力と称したマジックを見せたのがコンビ結成のきっかけになりました。決め台詞は「お前のやったことは全部お見通しだ!」で、木曜午後9時台で放映された第三シーズンからは「全部〜」の後に「まるっと」「スリっと」「ゴリっと」がどんどん追加されていき、現在は「お前のやったことは全部まるっとスリっとゴリっとエブリシングお見通しだ!」にまで達しています。

上田次郎(演:阿部寛)

日本科学技術大学の物理学教授(第一シーズンでは助教授)です。尊大な態度に高身長と、ナニもかもがデカいが人間としての器は小さいのが欠点です。通信教育でマスターした空手を得意とし、劇中では何度か危機を脱したことも。著書の「どんと来い! 超常現象」シリーズが好評でテレビのレギュラー番組を持っています。座右の銘は「なぜベストを尽くさないのか!」で、同名の著書も出版されています。

矢部謙三(演:生瀬勝久)

警視庁公安部所属の警部補(刑事)で、山田と上田の関わった事件を常に担当することになります。権力主義者的な面をもち、山田に対する態度は上田へのそれとはまるで正反対。カツラ装着者で「ヅラ」「ズレる」といった言葉に過剰反応してしまうのですが、初対面者を含む周囲はカツラであることをわかっているので「何がですか?」のような反応を一様に返すことがしばしば。趣味は温泉巡りで、育毛の効能がある温泉となると目の色を変える一幕も。温泉に入るときはカツラをはずすので、頭部にモザイク処理が掛けられるという笑いの提供源です。

石原達也(演:前原一輝)

初代矢部刑事の部下。金髪でエセ広島弁を喋るというチンピラ染みた服装というおよそ刑事らしからぬ格好をしているが、極道映画からの影響を受けているだけのようです。第一・第二シーズンと劇場版第一作に登場したのですが、演じていた前原一輝さんの芸能界引退に伴い、広島県警に配属される形でフェードアウトしてしまいました。

菊池愛介(演:姜暢雄)

二代目矢部刑事の部下。東大出身のキャリア組で常にその事を鼻に掛けたキザな言動をして、そのたびに矢部の怒りを買い鉄拳制裁されてしまいます。テレビスペシャルでは出世して矢部の上司になるが鉄拳制裁を喰らい気絶、ストーリーに一切絡むことがなかった一幕も。

秋葉原人(演:池田鉄洋)

三代目矢部刑事の部下。その名の通りアキバ系をカリカチュアしたキャラクターで山田に萌えたり、パソコンを駆使してみたりするが矢部と同じであまり役に立たないキャラクターです。

池田ハル(演:大島蓉子)

山田の入居しているアパート『池田荘』の大家さん。家賃滞納の常習である山田の天敵でもあります。劇場版で山田の隣人で大のお気に入りでもあったジャーミー君(演:アベディン・モハメッド)と結婚。テレビスペシャルでは遂に山田を追い出してしまいましたが、劇場版第二作では元の鞘に収まっています。

『トリック』の人気の秘密は?

『トリック』がこれほどまでに高い人気を得たのは、ヒットメーカー・堤幸彦氏の手腕によるところが大きいでしょう。山田奈緒子を演ずる仲間由紀恵と上田次郎を演じる阿部寛による見た目通りの凸凹コンビが衝突しながら事件を解決していく姿は、日本テレビ系列のドラマ『俺たちは天使だ!』『傷だらけの天使』『探偵物語』に通じるものがあります。また、脇を固める野際陽子や生瀬勝久の怪演もまたドラマを引き締めています。しかし、第一シーズンの中核であった山田の父・剛三の死の謎は灰色のまま幕切れし第二シーズン以降、まったく影も形も現れないままになってしまったのは残念なところです。剛三役を演じていた岡田真澄さんも既に故人となってしまっているため、続編での謎の解明は難しくなってしまったのが返す返す残念です。

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